Y.S.PARK Official Blog
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- Deep Focus -
Y.S.PARKの作品作りにおいては、「 Deep Focus = ディープフォーカス 」、いわいる後ろボケが全くない写真で撮り収めています。よくあるHair Style写真においては、甘さと雰囲気でまとめたものが多く、ヘアスタイルがどうであろうと絞り込まずにレンズのボカシを多用したものが多い。それが「かわいい」といっている傾向があるのではないかと思います。そのような手法とは一線を画したことが「ディープフォーカス」です。
ヘアスタイル作りにおける「ぼかす」「シャープにまとめる」「エッジを利かす」「硬く見える」「柔らかく見える」とは、ヘアカットや仕上げの技法であります。それにともない、仕上げの構成あるいは、面やディテールのバランス、強弱、質感などによって作っていきますので、最も大切な要素であり、それを作り手がコントロールして作り込んでいく いわゆる「見せ場」です。
そのようなスタイルを作る上での技術を屈指し、形のメリハリを作り、全体のコントラストを調節したものであっても、撮影の段階によっては、「見せ場」がボケてしまっていたり、あるいは写っていないことが多々あり、せっかくのヘアデザインの意図しているところが、活かされていないような気がしてなりません。
- Reality -
Y.S.PARKでは、元来「ヘアを作った人がシャッターを押す」という伝統があります。その中で経験をし、感じてきたことは、何でも背景をボカシてしまえば「かわいい」。雰囲気でまとまれば「いい感じ」という気分的な作品作りではなく、もっとリアルに、そして、もっとシュールなヘアを写真に収められないかということでした。
ヘア作りにおいても、雰囲気重視のヘアは、どちらかといえば気分的なクリエイションになりがちで、どうしても技術やテクニックなどと離れていってしまい、薄っぺらい技術力、表面だけをかじった程度の形になってしまいがちです。
自ら写真に収めるようになってから、目指していたものは、雰囲気も大切ですが、その雰囲気やヘアを見せるための「裏付け」、そのための圧倒的な技術力です。それを良くまとめ作り上げ、そして 一枚の絵にする。
もちろん写真を撮ることは本職ではありません。ですから写真でどうこうするには限界があります。ですが、本業のヘア作りは違います。
鍛え抜かれた、技術、テクニック、創造力と経験で、作り込んだヘアスタイルの仕上がり。そのこだわりを、どうすればカメラにリアルに収められるのだろう、という一念で試行錯誤を繰り返していました。
- Camera -
当時、ヘアスタイリストで自らカメラを施している人はあまりいませんでした。カメラといえば、鉄道の写真を撮っている若者か、公園でしゃがみこみ、マクロで花を撮っている年配の方、ぐらいでしたので、周りからはオタクに思われていたことでしょう。
恵まれたことに、お客様で写真家の方がいらっしゃいましたので、仕事が終わってから、夜遅くに尋ねていき、撮影現場を手伝いながら、見学させて頂いたり、自分の撮った写真を見て頂いたりして、独学で吸収していました。
そうしている影響でしょうか、ついに、職場内にもカメラブームがおとずれ、同僚でもカメラを購入するものも出てきました。
同僚からよく「ヘアを写真に収める時、背景をボカすには、どうすればいいですか?」と聞かれることが多く、やはり後ろがボケていれば「かわいい」良い作品であるということが支持されていました。しかし、どうしてもヘアスタイルで足りない部分をカメラで補ってもらおう。というわけではないのですが、自分自身、何か納得出来ないものがありました。
もちろん、「 カメラ=写真 」というものは、人類の大発明の一つでもありますし、表現をする上で素晴らしいものであることには間違いありません。本職ではありませんが、本当に素晴らしいものだと思います。しかし、ヘアを作るプロとして、本当に完璧な綺麗な形であればどこから撮っても綺麗に違いない。そのようなものを作りたい。それを写真に収めたい。という思いが強かったのでしょう。
「なんとなくイイ感じのヘアスタイルを雰囲気重視で写真にしてみました。」ではダメなのです。「手が切れるほどのリアリティー」が必要だったのでしょう。
そんな試行錯誤をしているなか、きっかけが訪れます。
子供の頃から絵画が大好きだったことから、お金を貯めては、輸入書店へ行き、高価な画集を買い集めていましたので、良く見ていました。
そして、そこで見た「 Caravaggio 」さらには「 Rembrandt 」 の作品。
光と影。手が切れるほどのリアリティー。その場の空気や光まで描写してしまう圧倒的な技術力。
そして、そこからの強力な影響もあり「 Deep Focus = ディープフォーカス 」「 後ろボケはいらない 」という路線になっていきました。
- 「 日の丸写真 」 -
ある時、Stylistを集めて撮影会をしたことがありました。よくあるお題を決めて一人一人がヘアメイクで作り込み、それを写真に収めるという企画です。その時、はじめて「今日は、ストロボ一灯のライティングで、後ろボケのないシャープな写真でやるから。」と言ったところ、あるスタッフから「証明写真みたいになりませんか?」などと言われたのを覚えています。ヘアの写真を撮る場合、中央で正面から写した、俗に言う「日の丸写真」はご法度でしたので、無理もありません。
時代は銀塩からデジタルに移り変わり始めのころでしたが、レリーズしたものがすぐにモニターで確認出来る、いわゆるテザー撮影をやっていましたので、即座に皆に見せることができました。これは便利、すごい、と盛り上がり、皆で画面で確認しながら進めていったのですが、絞り込んでディープフォーカスで撮ってるものですから、細かいところまで鮮明に写る出来上がりをみて、何度もヘアの手直し、Makeの手直しをすることになります。撮った写真を見たスタッフが「微細な細部まで写ってしまうから。」と念入りにチェックをし始めたのです。
それまでは、ああしろ、こうしろと言っていましたが、自分で見るといわれなくても一目瞭然でわかります。
髪の毛が一本でも飛び出ているのも鮮明に写るものですから、ヘアのシルエットやアウトラインを一本の乱れもなく整えます、そうすると今度は、形が硬くなってしまい柔らかいシルエットが作れません。
どうしたものかと試行錯誤をしていると時間が掛かってしまい、せっかくのヘアが崩れてきます。そして、なんとか、やっと出来上がる。この繰り返しでした。
今までは、柔らかいだの自然だの言っていたのが、写真でそう映っていただけで、実際は違うんだと皆が気がついたのです。
- 鍛え抜かれた職能 -
ヘアは作り込んだ上で柔らかく、そして写真はその細部まで鮮明に、というリアルなヘアスタイルをリアルに写真に収める、ということをすることで、ただ雰囲気だけで作るのではなく、そのヘアを作るスキルが求められるようになります。
Salonにおきましては、いろいろな要望のお客様がいらっしゃいます。いろいろとトライをし、自分だけのこだわりヘアにたどり着かれ、自分はこれだ、これでなければダメなんだ。という方もたくさんいらっしゃいます。
そのような方には、毎回同じスタイルを、寸分違わぬ精度で作り上げるスキルが必要です。万が一、10,000回に一度の失敗も許されない、鍛え抜かれた職能を持ち合わせていなければなりません。
そのような腕を持ち合わせた技術者の仕事と、鍛え抜かれていない技術者の 気分的なクリエイションでは比較にはならないのです。
写真でどうこうするのではなく、写っているもの自体が本当に素晴らしいものでなければなりません。
それこそが、私たちの本業ですので、とても大切なことだと思い続けています。
Keisuke Moriyama
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